「具体」回顧展・兵庫県立美術館

「具体」の名前は聞いたことはあったものの、何をやっていたのかはさっぱり知らずにいて、今回の回顧展は気になっていました。でも、昨日最終日となっているのに気づき、急いで夕方出向いた次第。
「具体」というのは、50年前、関西に始まった日本における現代アートの芸術家集団及び彼らの一連の運動のことです。
いや、「現代アート」なんて言わないほうがいいな。これまで誰もやっていないあらゆることを推奨し、作品をぞくぞく発表する集団です。
会場の入り口をくぐると、グループ立ち上げ初期に開催された、芦屋川沿いの松林での野外展示作品が、来場者を迎えます。 作品の一つ一つはといえば…イマイチ。初期の作品群は、正直いって学生がやりたいようにやってみた域を出ません。 ですが、いまよりも世間や芸術界の縛りが遥かにきつい50年前のこと、勇気をもって「初めてやること」を推奨していたのだし、現在の「目の肥えた」視点からするといまいちに見えるのも当たり前でしょう。
吉原治良氏も若手芸術家の精神のストレッチングのつもりで始めていたことだったのかもしれません。事実、奥へ進み中期以降の作品を目にすると、現在でも驚きをもって受け入れられるモノが続々と続きます。

「具体」の作品は主に絵画が多いのですが、彼らの活動は絵画にとどまらず、いまでいう「パフォーマンス」とカテゴライズされることにも、当時発売されたばかりのテープレコーダーを駆使して、おそらく世界で最初ぐらいに発表された(であろう)音響作品(ミュージックコンクレート!)*1にまで及びます。50年前にですよ。 そら、ジョン・ケージも大阪まで遊びにくるわ。

彼らの活動がピークを迎えるのは大阪万博のとき。太陽の塔の真裏のだだっ広いスペースで、「パフォーマンス」をやってのけます、夜にスポットライトを浴びながら。映像をみましたが、「パフォーマンス」としてはだだっ広いスペースを使い切れていないし、親子で見る「エンターテイメント」としてもこなれていない。 多分、全国からやってきた親子連れ引きまくりだったんじゃないでしょうか。「これも芸術っていうのか?」と眉をひそめる親と、気持ち悪がる子供。受けているのは幼児のみという光景が目に浮かびそう。

高度成長期が思い浮かばせるイメージからすると、こういう試みが一般に広くは受け入れられがたいし、活動そのもののも資金的な面から追い込まれると思うのですが。
単に社会がおおらかだったから、「けったいな」人たちの「けったいな」活動を受け入れる余裕があったのか、 芦屋という土地がそういう素地を有していたのかもしれない・・・などと思いながら帰路についたわけですけど。不思議な時代です。高度成長期。

http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_0401/main.html

*1:後で、調べてみましたが、ピエール・シェフェールが元祖のミュージックコンクレートは1948年です。彼らの活動はそれよりも後ですが、展示してあった当時のパンフレットを見ると、「ほぼ世界で初めてではないか?」と自賛。