「運命じゃない人」内田けんじ

神戸アートヴィレッジセンター(KAVC)で開催中のぴあフィルムフェスティバルPFF)に行く。KAVCもひさしぶりだったんだけど、新開地のあの辺りも少し変わって濃さが薄れてきたかもなぁ。
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 きょうの演目は「運命じゃない人」内田けんじ監督作品。
浮気をした婚約者から逃げてきた女、婚約者に騙されて逃げられた男、探偵業を営むその親友、実は結婚詐欺師だった男の元婚約者。彼らを緻密な脚本に基づいて、登場人物ごとの視点からの映像を複数のレイヤーを重ね合わせるような編集で描いたラブストーリー、もとい良質な娯楽作品。いや、最後はラブストーリーになるのかな。

 はじめの15分は傷心の男女が不器用に引き合って不器用に別れる話を演出過剰気味に描いているかと思っていたのですが、元婚約者の秘密が明かされて行くパートになって話はスピードアップ、これでもかという程一見無関係な登場人物を絡ませて行きます。すっかり裏切られましたよ。 ただ時系列に並べていたら陳腐になる話を、見せるようにした監督の力は図抜けている。
 ただ、人物が切り替わった視点で同一の場面を描き直す際、もっと徹底して切り替わった側の視点から描いたら、もっとシャープで好きだったのですが。その辺は好みか。
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 終演後、監督本人を交えたトークショー。観客からの質問の答えによると、脚本が一番力が入り、編集を楽しむのだそうで(もちろん撮影現場も楽しいとフォロー)。彼の場合、テレビドラマとかよりも、頭からしっぽまで詰めてもらってアイディアを形にさせてやる方が活きそうな感じですね。
 ショートフィルムやPVでは監督のアイディアを自分自身で最後まで形にするというのを見かけますが、そうでなければ制約はより大きそう。事実、撮影の際本来の脚本から切らないと行けないエピソードがあったようで。今後、「じんましん」でまくりでも、突き通していってほしい限りです。
この作品は来年全国公開予定。できればここなどを見る事なく予備知識なしで行くのがよろしいかと思われます。